十三期生 / 畑玲音 / 研究活動

Posted on 2025-01-20
第211回HCI研究会で「WISE-UP:LLMを利用した便利の副作用顕在化のためのアイデア発想支援」というタイトルで発表してきました(M2畑)


みなさんおはようございます☀️
松下研究室M2の畑 玲音です.
2025年1月14日(火)〜15日(水)に沖縄県那覇市の沖縄産業支援センターで開催されました「第211回 ヒューマンコンピュータインタラクション研究会」で発表しました.この研究はHCI206で発表した研究HCI208で発表した研究WI2研究会で発表した研究の続きとなりますので,よろしければそちらもあわせてご覧ください.

発表内容

タイトル:WISE-UP:LLMを利用した便利の副作用顕在化のためのアイデア発想支援

著者:○畑玲音,松下光範

学生の皆さん,こんな経験ありませんでしょうか..

私「我ながら素晴らしいアイデアを思いついた....これは行けるぞ.....」
先生「それってさ,こういう問題発生しないかな,これって本当にいいの?
私「え,そりゃそうなりますよね,え,,なんで思いつかなかったんだろう.普通に考えればそうなるじゃん....」

自信たっぷりで研究相談をしに行くと,見事にボコボコにされた経験皆さんないでしょうか?私は学部生の頃誹謗中傷の研究をしていたのですが,その時の相談内容として,「誹謗中傷を撲滅したい!こうしたら誹謗中傷を呟けなくなると思うんです!!」というアイデアを思いつきました.その時言われたご指摘が「誹謗中傷をしている人たちは,実はストレスの捌け口になっている可能性はない?完全に撲滅してもいいものなのだろうか」でした.この観点として,誹謗中傷の被害者だけではなく,加害者の視点に立ったものだと思います.

こういう指摘って聞いた瞬間に,「え,確かに!!」って思うし,なんなら人の研究を聞いている時は「こういう問題あるよね?」と指摘できるんですよね

これは研究室内だけの話ではなくて,企業の商品開発でも同様の問題が発生しています.例えば,電気自動車.おそらくですが,企業では「燃費が良くて静かなエコカーを作ろう!!」という流れで電気自動車が作られたのかなと思っています.

しかし,ここで問題発生.「静かすぎて歩行者や耳の聞こえにくい人だと車の接近に気づかない!!」という問題が発生したんですよね.現に初期の電気自動車にはついていなかった「車両接近警報装置」という低速では音が鳴る機械が今の電気自動車にはついています.「クゥーン」というスイクンみたいな音のあれです.

このように,何かを便利にした時には,副次的に問題点が一緒に発生してしまうんですよね.アイデア発想をする時はよく,この便利になった結果しか気づかなかった問題を見落としてしまいがちなんですよね.我々はこのような問題を便利が生み出した副作用ということで,「便利の副作用」と呼んでいます.

やっと本題に入って行くのですが,我々はこの便利の副作用をなくそう!としているのではなく,「見落としてしまうことによって発生してしまっている」という部分に注目しています.アイデアを考える人たち(私たち学生もそう)はやはり,「こうなって欲しい!!」というような目的や「こういうすごいことができます!!」という技術の部分に着目しがちなんですよね.それが自分の考えの中心にあって,それに注視してしまうことによって,視野がだんだん狭くなってしまっています.その結果,気づく力はあるのに気づけない,気づいていても軽視してしまう,だから便利の副作用に気づけず見落としてしまう,という流れになっています.人の研究の問題には気づけて,自分の研究の問題は気づけなくなってしまうのはこれが原因かもしれないですね.

本研究の目的は,アイデアの実現により便利になった結果しか気づかなかった問題を,実現する前に考えられるようにすることです.つまり,便利の副作用の見落としを防ぐために視野を広げてあげることが目的です.これによってアイデアを実際に作って行く前に壁打ちをすることができます.先生に相談しに行く前にボコボコにされる予行練習ができるようになれたらなぁなんて思ってこの研究を進めていました.

我々の提案手法では,便利になったことによって行為がどのように変化するのか??に着目することによって幅広い視点から便利の副作用に気づくことができる!という提案をしています(HCI206で発表した研究).しかし,ここで問題点として,便利の副作用を見つけてあげる支援が逆にシステムに頼ってしまうという便利の副作用を発生させませんか?という指摘を受けたため,その検証も行いました(HCI208で発表した研究).その結果,システムの有無に関わらず,行為の増減の変化に着目すること自体に視野を広げる効果があったことがわかりました.しかし,さらにここで問題点.行為の増減の変化はLLMを用いて推定していたため,既存の便利になったモノでしか推定することができませんでした.

そこで今回の提案では,アイデアを具体化することによって未知のモノでも行為の増減を推定できるようにする試みをやってみました.アイデアの具体化は発想支援手法であるTRIZをLLMによって対話的に行えるようにするシステムを用いています(WI2研究会で発表した研究).これによって具体化されたアイデアを用いて行為の増減を推定し,便利の副作用の確認が行えるようになっています.

この一連の流れを対話的に行える発想支援アプリWISE-UPを開発しました.WISE-UPは (Workflow for Interactive Side-effect Evaluation and Unfolding Perspectives) の頭文字をとったモノであり
Workflow: ユーザーがアイデアを成長させるステップごとにサポートされるシステム内での一連のプロセスや流れ
Interactive: システムとの「対話的な」やり取りを通じて,ユーザーがアイデアを深めていくこと
Side-effect Evaluation: 便利さや使いやすさなどから生じる「副作用」を意識的に評価し,アイデアに内在する問題や 改善点を発見すること
Unfolding Perspectives: 従来の考え方や視点を広げ,新たな視点を「開く」こと
つまり,「WISE-UP」はユーザがシステムとの対話の中で副作用を発見し,多様な視点を取り入れてアイデアを成長させると言う意味を持っています.英語の表現としても,「賢明になる」「物事をよく理解する」と言った意味が含まれており,「視野を広げ新たな視点を得てアイデアを成長させる」というニュアンスが含まれています.

こちらがデモ動画になります.
このデモでは,傘を便利にした形の変わる傘を題材にしています.システムの流れとして,まず思いついたアイデアを入力します.次にTRIZの機能が使えるように,そのアイデアの具体化をシステムとのチャットにより進めていきます.これによって出力されたトレードオフから解決したいものを選び,解決策が出力されるので,そこからインスパイアを受けてアイデアの具体化を行なっていきます.最終的に便利の副作用の確認が行え,その対策を考えることができる.という流れになっています.

このシステムによって,ユーザが発想の時に見落としやすい問題点はどのような観点なのだろうという知見を貯めることができ.AIと人との共創によるアイデア発想ができるようにこれからも研究を進めていきます.

発表資料

HataReon_HCI211_WISE-UP:LLMを利用した便利の副作用顕在化のためのアイデア発想支援 from Matsushita Laboratory

感想

帰ってきた沖縄.
研究に熱が入り始めた去年の沖縄から,1年越しにまた沖縄に帰ってきました.この1年で12件の学会発表に携わらせていただきました.少しは成長して帰って来れたのかなぁ,なんて感じています.研究や発表のレベルは少しずつ上がってきたと思いますが,一番成長を実感できた部分は「観光」なんですよね.

「観光で成長を感じるとは遊びすぎだろ」と感じるかもしれません.でも,これが私にとってはすごく大切なことで,実は研究を頑張ろうと思った一番の理由にもつながっています.
M1になって初めての学会発表(in 熊本)に参加した時のこと.発表後,松下先生と山西先生との観光ドライブに行ってきました.車での会話を今でも覚えていて,本当に何言ってるか分からなかったんですよね.
松下先生:「あの発表はこうで,こうこうこうやったら上手く行くと思ってて,,」
山西先生:「いや,これは違うくて,こうこうこうじゃないですか,,,」
松下先生:「たしかにそうなんだけど,こうこうこうでこうなきもするんだよなぁ,,」
山西先生:「ということはつまり,,,,」っていう会話が無限に繰り返されていたんですよね.悟空の戦闘を見ているヤムチャ状態とはまさにこのことでした.やっぱり賢い人たちの会話って何言ってるか分からなさすぎて,あれ,これ私めっちゃばか?と思わされました.
それだけではなくて,観光地の至る所で「これってこうなってるのかなぁ」とか,「何でこうなってるか知ってる?」とか,,なんか何でただ観光してるだけなのに勉強になってるんだ,やばい自分は本当の意味では楽しめてないぞ,,,と思ったんです.この悔しさが研究を頑張れた大きな原動力になっています.

いまだに学会発表のたびに,「自分ってまだまだなんだなぁ」「こんなすごい人たちがいるんだなぁ」と絶望を重ねています.しかし,そんな中でも少しずつ視野を広げて,物事を深く考えられるようにはなってきたのではないかなとも思っています.

このような機会を与えてくれる環境にすごく感謝しています.自分がバカすぎること,一人では何もできないことに気付かされる毎日を送れる環境に身を置けてよかったなと,学会を通して思いました.松下先生,山西先生には感謝しかないです.一緒に研究をしてくれる仲間にも感謝しかないです.みんな大好き,Bigらぶ.

p.s.
コーレーグースー(泡盛に唐辛子を漬け込んでるやつ)があまりにも美味しすぎて買っちゃった.
何でこんなにふざけた写真しかないんだろうか...

(文責:M2畑)













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