十三期生 / 畑玲音 / 研究活動

Posted on 2024-06-12
HCI208で発表しました(M2畑)


みなさんおはようございます!
松下研究室M2の畑玲音です.
2024年6月7日(木)〜8日(金)に東京大学の山上会館で開催されました「第208回 ヒューマンコンピュータインタラクション研究会」で発表しました.
東京大学山上会館にて発表する畑(画面左の演台)

発表内容

タイトル:便利の副作用に気づかせるための発想支援手法の評価-行為の増減の提示による気づきへの影響-
著者:○畑玲音,松下光範

AIが日に日に進化をしていますが,その中でも人類はイノベーションを起こし続けています.現代では,「真新しいアイディアを生み出すことが重要」な世の中ということではないでしょうか.

みなさんが新しいモノのアイディアを考えるときは,何を考えますか??こういうモノを作ったら便利だろうな,,,,誰も思いつかなかったものを作りたいな,,,,のような思考になるのではないでしょうか??

このように,新しいモノを生み出すためのアイディア創出過程では「便利さ」「新規さ」という指標に注目が行きます.さらに,便利で真新しいモノを作り出そう,便利なモノはいいモノだ,斬新なアイディアでいい,,,のようにこの指標に過度な着目をしてしまいがちです.しかしその反面,その新しいアイディアを実現することにより想定外の問題が発生してしまう可能性も潜んでいるのです.例えば,今では毎日肌身離さず持っている「スマホ」のアイディアを発想するときに,「歩きスマホ」や「スマホ首」を事前に問題視した人はいたでしょうか??

このように,アイディア発想では潜在的な問題点を見落とす可能性があります.

なぜこのような見落としが発生するか.それは確証バイアスによって発生してしまっています.確証バイアスとは,自分の仮説や期待する情報を優先的に集め,逆に反対の情報を無視してしまう傾向のことです.発想の場面においては,自分たちが作るモノがどれだけ良いモノなのかを過大評価して,逆にそれによって悪いところを見なくなってしまうことにより,重大な問題点を見逃したまま開発が進んでしまうということです.

本研究では,この確証バイアスにより見落としていた,つまり思っても見なかった問題点を便利の副作用と読んでおり,その便利の副作用を未然に防ぐアイディア創出方法について検討しています.

その一端として,前回アイディア発想支援手法を提案しました.説明は割愛させていただくので,ぜひご覧ください!

この発想支援手法では,新たなモノのアイディアによって便利になることによる問題点である便利の副作用を発見するためにAIを用いたシステムを提案しました.ここで問題になってくるのは,AIで支援されるという提案手法ではなにか新しい問題を発生させないのだろうかということです.つまり,便利の副作用を発見するシステムの便利の副作用を検証しました.「便利」でゲッシュタルト崩壊しそうですね.

詳しく解説していきます.
我々が提案した手法では,問題点に気づかせるために行為の増減変化というものを提示しています.例えば,本から電子書籍に便利になった場合,栞を挟むという行為や本棚に置くという行為がなくなって,スワイプしてページを捲るという行為や端末を充電するという行為が生じます.このような増減の変化を提示しました.

しかし,この提示という支援は人間の次のような思考を省略している可能性がありました.
「なくなる行為が何かあるかな?」という思考は,今の現状に対して不便と感じる行為を明らかにするということ.「生まれる行為があるかな?」という思考は,今から生み出すアイディアに対してどういうモノにしようかなとアイディアを膨らませるということ.この思考をAIに任せるのは果たして良いのか??ということです.
AIに頼ることにより,現状どのような状態であるのか,また新しいアイディアはどのようにしたら良いのかなどを具体的に考えなくなる可能性があります.
そこで本研究では,便利によって発生する問題点を考えるときに,行為がどのように増減するのかという変化を提示することによる影響を調査しました.

実験では行為の増減の変化を自分で考えるか提示してもらうかによる影響を調査しました.その内容として,問題点に未然に気づくときの影響とその問題点を防いだアイディアのブラッシュアップのときの影響を調査しました.そのモノでどのような行為があったかな?と思考することで,より問題点に気付けたりいいアイディアを考えることができると仮定していました.
実験手順を以下に示します.
まずアイディアに対して,どのような行為の増減があるのか着目してもらいました.そこからユーザは問題点を発見してもらいます.最後に,その問題点を防ぐアイディア発想をしてもらいました.
行為に着目してもらうために以下のフォーマットを用意しました.
これは本から電子書籍になった時の例です.まずユーザには本に関連する行為と電子書籍に関連する行為をできるだけたくさん列挙してもらいます.(まず箇条書きにしてもらいます)次に,本でしかやらない行為,つまり減る行為を青色に,電子書籍でしかやらない行為,つまり増える行為を赤色に変換してもらいます.(AIの支援によりここを省略しています)最後に,それぞれの行為のうち問題が発生する可能性がある行為にマーカーをしてもらっています.例えば,「本屋に行く」という行為は本を選びに行くだけではなく,全く興味のなかった本に出会う可能性があります.それが失われるのは問題だよな,,ということです.このように,実は嬉しかったメリットがなくなってしまう.行為が増えることによりデメリットが発生してしまう.このような行為から便利の副作用が発生していると考えています.
このフォーマットを用いて,実験を行っています.

結果は,行為の増減を提示することによって,未然に発見する問題点の数が増加しました.
これは,問題を発見するときの選択肢の数の違いであると考えています.下記の表のように,行為の増減の提示ありでは36個の行為が提示されており,その中から問題点になる行為を発見しています.しかし,行為の増減を自分で考えた群では平均して17.9個しか選択肢がなく,その分問題点を見つけることができなかったと考察しています.
さらに詳しく結果を見ていきます.
上記の表は実験での相関係数を示しています.この表からわかることとして,行為の列挙(最初の箇条書き)が多ければ多いほど,選択肢(行為の増減)が多くなることがわかります.しかし,選択肢が多ければ多いほどいいというわけではないということもわかります.

さらに,実験参加の中には電子書籍をあまり利用しない人もいました.その参加者は電子書籍に関連する行為の列挙数が少ない傾向がありました.つまり,行為の増減変化を提示するという支援があっても,具体的に行為を想像することができていないと問題点に未然に気づくことができない可能性が示唆されました.
新しいモノのアイディアを発想するときには誰だってそのモノを使ったことがありません.みなさんもどこでもドアを使ったことはないですよね.どこでもドアを使ったことがないまま,どこでもドアに関連する行為を提示しても,そこから問題点を想像することができないのでは?ということがわかりました.

この提案手法では,新しいアイディアにより発生する問題点を見つけるのには効果があったのですが,それを防ぐためのアイディア発想ではあまり影響がないことがわかりました.これは問題を見つける支援とその問題を防ぐためのアイディア発想支援は異なるためであると考えています.

今後は,この提案手法を新規の新しいアイディアにも使えるようにしたいと考えています.そのために,新規のものでも行為の増減を推定できるような手法を検討する必要があると考えています.また,行為を提示するだけではなく,その行為がどういったものなのか具体的に想起させる手法も検討していかなくてはなりません.
また,問題点を防いだアイディア発想では,元々もアイディア即ち電子書籍と全く異なったアイディアを考えてくれていた実験参加者もいました.この発想支援手法がモノを生み出す創造過程において,どの段階で支援するものなのかを明確にする必要性があるということもわかりました.

発表資料

ReonHata_便利の副作用に気づかせるための発想支援手法の評価—行為の増減の提示による気づきへの影響— from Matsushita Laboratory



感想

今回は「はじめてのひとりがっかいさんか」でした.いつもはみんなでワイワイできる学会,,,,さみしい,,,,と思ったのですが.意外と楽しめました.発表中の写真も参加者にお願いして撮ってもらったのですが,冒頭一枚でいいので,,,とお願いしていてカメラロールを見るとびっくり.いろんな画角で,なんなら会場の後ろまで行って全体まで撮ってくださっていました.すみません,,,本当にありがとうございます....(ご本人に届け,,,,),学会では北陸先端科学技術大学院大学の西本一志教授とお話しさせていただきました.西本先生の論文をたくさん読ませていただいていて,質問までしてくださって.....ご本人登場とはまさにこのことだと感激しておりました.この研究をもっと進めようと思いました,ありがとうございます.東京では同期である13th卒業生と会うことができ変わらないところも変わったところもたくさん話せていい弾丸東京旅行だったなと感じております.

p.s.
東京大学がおしゃれすぎる,,,,高槻キャンパスよりも自然が自然だった(語彙力)   
(文責:M2畑) 
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