十三期生 / 畑玲音 / 研究活動 / 藤川雄翔

Posted on 2024-06-10
JSAI2024で発表しました(M2 藤川)


皆さん,こんにちは!M2になりました藤川です.
今回は2024年5月28日(火)〜31日(金)に,静岡県浜松市にあるアクトシティ浜松で開催されました2024年度 人工知能学会全国大会(第38回)で「物語のコンセプトに基づく情報アクセス手法の基礎検討:短文要約文とあらすじ文との比較」というタイトルで現地にて発表いたしましたのでその報告をさせていただきます.
この研究は第10回コミック工学研究会で発表した内容の続きになりますので,よろしければそちらも合わせてご覧ください.

発表内容

タイトル: 物語のコンセプトに基づく情報アクセス手法の基礎検討:短文要約文とあらすじ文との比較

著者: ⚪︎藤川 雄翔,畑 玲音,松下 光範

 私たちは漫画や小説,映画など様々なメディアを通じて物語作品に触れ,鑑賞しています.それらの物語作品のストーリーの内容は一言で説明することができます.例えば,「ボーイ・ミーツ・ガール」という言葉がありますが,これは「少年と少女が出会う物語」の総称を指します.さらに詳しく「ボーイ・ミーツ・ガール」を説明するならば,「少年と少女が出会い,冒険をしていく物語」もあれば「少年と少女が出会い,恋に落ちる物語」などもあります.このような物語作品のストーリーの内容を一言で説明した文章を本研究ではコンセプトと呼びます.こういった文章は何もこの研究独自の文章ではなく,私たちが家族や友人におすすめの物語作品を紹介をするための簡単な説明として使ったり,この文章に要素を付け加えていくことでストーリーを膨らませて制作するためのアイディアの土台としても使われます.

 本研究の目的は,前述のコンセプトに着目したストーリーのコンセプトに基づいた物語作品への情報アクセスの実現です.この情報アクセスが実現することで,ジャンルや著者などの書誌情報やキーワードを用いた特定の物語作品を探す従来の検索とは異なり,類似する物語作品を多く検索することが可能になると考えます.このような探し方は実際にX(旧Twitter)でも確認することができます. いじめられっ子が残忍な方法で復讐する漫画(物語)」を読んでみたいけど,それに該当する物語作品のタイトルがわからないので他に知っている人に聞く,といったようにストーリーを一言で言い表した説明文(コンセプト)から類似したストーリーをもつ物語作品を探しています.

 コンセプトに基づいた物語作品への情報アクセスの実現には物語作品ごとにコンセプトが必要になります.というのも,ストーリーのコンセプトが記述されたリソースが少ないからです.ストーリーの見どころがわかるハイライトやストーリーの流れがわかるダイジェストとは異なり,コンセプトはそれ自体を読むことで楽しむということはないため,物語作品ごとにコンセプトは用意されていません.そこで物語作品ごとにコンセプトを作成するために,本研究はコンセプトと同じく物語作品のストーリー内容の説明として用いられ,かつどの物語作品にもリソースがあるあらすじ文に着目しました.コンセプトに書かれる内容があらすじ文にも書かれていたり,意味的に類似しているならば,あらすじ文からコンセプト作成に必要な情報を抜き出して,コンセプトが作成できるのではないかと考えました.本研究では,物語作品のあらすじ文からコンセプトを作成可能か,可能であるならばどういった要素が必要なのかを定性的に明らかにします.

 あらすじ文の収集は漫画全巻ドットコムの歴代発行部数ランキングから上位150作品の作品概要をあらすじ文として収集しました.物語作品の内容に関係のない商品情報などのメタ情報のみとなっている作品概要はあらかじめ取り除き,今回は135作品の物語作品のあらすじ文を対象としました.続いて,コンセプトの収集はYahoo!クラウドソーシングを用いて,物語作品の要約の文字数を100文字以下にすること以外は前回と同様の条件で収集を行いました.この条件を満たし,収集したあらすじ文と同じ物語作品のコンセプトは126件(58作品)でした.

 物語作品のあらすじ文からコンセプトを作成可能か,可能であるならばどういった要素が必要なのかを明らかにするために本研究では以下の3つのことを行いました.
  1. sentenceBERTを用いて,あらすじ文とコンセプトの文章ベクトルをそれぞれ算出
  2. あらすじ文とコンセプトの文章ベクトルの類似度をそれぞれ算出
  3. 類似度の高低からあらすじ文とコンセプトの差異を観察

 結果は,あらすじ文との類似度が高くなったコンセプトは(1)物語作品の主人公にあたる主要キャラクタの特徴,(2)主要キャラクタのストーリーにおける主な行動の2点が記述されていることがわかりました.一方で,類似度が低くなったコンセプトは,どんなキャラクタが登場し,どういった行動をとるのかがわからず多くの物語作品に該当してしまうような抽象的な文章になっていました.以上の結果からキャラクタの特徴とそのキャラクタがとる行動をあらすじ文から抽出し繋ぎ合わせることで,類似した物語作品にアクセス可能なコンセプトの作成に期待できることが示唆されました.

 以上今回説明した詳しい研究内容は下記の発表スライドと論文情報に記述されていますので,ぜひご覧ください.

発表スライド:  
TaketoFujikawa_物語のコンセプトに基づく情報アクセス手法の基礎検討_JSAI2024 from Matsushita Laboratory

論文情報

藤川 雄翔, 畑 玲音, 松下 光範. 物語のコンセプトに基づく情報アクセス手法の基礎検討:短文要約文とあらすじ文との比較, 2024年度人工知能学会全国大会(第38回)論文集, No.1J5-OS-10c-03, 2024.

感想

 これまでに5度研究発表の機会をいただいているのですが,国内でここまで大きい学会は初めてで少し緊張しました^^;.今年のJSAIのホットトピックはやはり今話題の生成AIの1つであるChatGPTでした.ChatGPTを使った研究は体感で聴講しに行ったどのセッションにも最低1つはありました.また,人工知能を使った研究発表を聞いていると,人工知能のことを知っているようでよく知らないまま使っていたんじゃないかなと感じました.個人的には『車の運転はできるけど,そもそも車はどんな仕組みで動いているのか,それぞれのパーツがどんな働きをしているのかまでは詳しく知らない感覚』に似ているなと思ってます.卒業までにはもっと人工知能について勉強して,人工知能を使いこなせるように頑張ります!! 

 また,浜松での食事は美味しいものばかりでした!浜松に来たからにはやっぱり,浜松餃子と「さわやか」のハンバーグは外せませんよね!!もちろんウナギも食べたのですが,写真を撮るのをわすれてしまいました…orz

今回の学会で得られた学びや発見,いただいたご指摘をこれからの研究活動に活かし,よりよい研究になるよう精進してまいります!

 最後になりますが,論文や発表スライド等に関してご指導いただいた松下先生に感謝申し上げます.ありがとうございました.

(文責:M2藤川)
Tags:
Posted in 十三期生, 畑玲音, 研究活動, 藤川雄翔 | Comments Closed

Related Posts