十三期生 / 受賞 / 新川晴紀 / 研究活動
Posted on 2025-03-09
DEIM2025 第17回データ工学と情報マネジメントに関するフォーラムで発表&受賞しました(M2 新川)
こんにちは! M2の新川です.
2025年2月27日~3月1日(オンライン),3月3日~3月4日(オンサイト:福岡国際会議場)にて開催されたDEIM2025で発表しました.

発表内容
タイトル:LLMを利用した果樹農家の経験知の対話的蓄積支援
著者: ○新川 晴紀, 畑 玲音, 松下 光範
概要:本研究の目的は,果樹農家の経験知を外在化することである.熟達農家の経験知は農業技術向上の手段として期待されている.しかし,果樹農家は複数の要因(e.g.,作物の様子,天候の様子,人員確保)から農作業の実施を判断しており,果樹農家が作業を実施する理由を外在化することは困難である.そこで果樹農家の経験知を効率よく獲得するために,果樹農家のインタビューをもとに経験知の聞き取りに必要な要素を整理し,それを用いて農家が行っている作業理由の言語化を促す仕組みを提案する.提案手法で大規模言語モデル(LLM)による対話を通じて,経験知として蓄積すべき要素を判定し,言語化が不十分な要素を判定して深掘りすることにより,果樹農家における経験知の網羅的な収集を試みる.
サクッと解説:
「もう息子には継がせる気ない」「身体が動かなくなったら畑やめるわ」こういった,畑を息子に継承する意思がない農家が後を絶ちません. 実際にお世話になっていた農家の方も「息子がやりたいと言ったら継がせる」という子供の意思を尊重させる方針を取っていました.
しかし,こうした現状が続くと,農業人口の減少が加速するだけでなく,知識が継承されなくなり,20年あるいはもっと近い将来に,「みかんが出回らない」「みかんがおいしくなくなった」ということがありえる事態になっています.こうしたことを防ぐために,行政はUターンやIターンなどで農業人口を増やそうと試みていますが,こうした地域の外から来た人が知識を教わる場所は限定されてしまいます.
ここで問題となるのが,現役の農家は畑を継がせる気がないために知識を整理して人に伝えることにモチベーションがないのに対し,知識がほしい人はあてがないということです. そこで本研究では,知識を出す意欲がない人や言語化に慣れていない人から知識を引き出すことを目指しています.
今回提案したのは,LLMを活用したシステムから質問することで対話的に経験知を収集する仕組みです.問答によってモチベーションがなくても人から聞かれれば答えると考え,これをシステムとして組み込みました. 結果としては,有効性に関してはポジティブな評価が得られました.一方で,有用性の観点から「めんどくさい」というネガティブな意見がありました.しかし,我々はこれをマイナスな評価と捉えておらず,むしろ農家との関係値を築けていたからこそ得られた意見という風に捉えて,今後の改善に繋げていきたいと考えています.
口頭発表:

ポスター発表:
感想:
これまでに,伝えるにはどうしたらいいだろうとか,スケジュールを早めにしようとか,学会を通じて学んだことというのがたくさんありました.
今回の学会はその集大成としてかなり気合を入れて準備しました.
しかし,発表の前日に先生から「RQが書かれてないんだよ」という悪魔の囁きがあり,かなり絶望しました.(笑)
そこから先生とミーティングをして,追加・修正する箇所を指摘してもらいました.ギリギリまで修正する忙しなさは相変わらずです.(笑)
その甲斐あって,プレゼンテーション賞を頂くことができました.
賞の発表後に先生から,「これが「相手に伝わるようにする」ということですよ :-)」というドヤ顔付きのメッセージを頂き,「まだまだ先生には敵わないし,発表ってやっぱむじぃや」と思わされる学会でした.
初の賞を頂けた嬉しさもありつつ,これからも「伝わるにはどうすればいいか」ということを考え続けていかなければならないなと思います.
最後に,これまで研究に携わってくださった皆様に記して謝意を表します.
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