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Posted on 2025-09-25
EC2025で発表しました(藤川)


皆さん,こんにちは!夏の暑さで汗だくになって溶けつつある藤川です🫠
今回は2025年8月25日(月)〜27日(水)に,東京都世田谷区にある日本大学 文理学部キャンパスで開催されましたEC2025で「あらすじ文に含まれる物語内容の共通要素に着目したコンセプト文の生成」というタイトルで現地にて口頭発表をしてきましたのでその報告をさせていただきます.
 今回の発表は,レギュラーセッションでの発表とは異なり,査読付きとして論文を投稿し,11件の中から選ばれた5件のひとつとして特選セッションにて発表をしてきました.また,特選セッション発表認定として表彰されました.

発表内容

タイトル: あらすじ文に含まれる物語内容の共通要素に着目したコンセプト文の生成

著者: ⚪︎藤川 雄翔,松下 光範,山西 良典

解説: 
 現在,Webサイトやアプリで物語を楽しむことができ,視聴し終えると「あなたへのおすすめ!」として新たな物語が推薦されることも多いと思います.こういった推薦がされるときはたいていの場合,同じジャンルに属している物語やキーワードが一致する物語,自分の嗜好に似た人が他に視聴した物語が推薦されます.しかし,なぜ推薦されているのかわからない物語もたまにあります.このようなときに物語が推薦された理由が知りたいと思ったことはないでしょうか?この推薦の根拠の提示は私の研究であるコンセプト文によって解決することができると考えています.

 私の研究で扱っているコンセプト文とは,「主人公が仲間を集めて平和を脅かす敵を倒す物語」のように物語の主題を端的に表した文章のことを指します.この文章に当てはまる物語は例えば,「桃太郎」や「ドラゴンクエストシリーズ」,「プリキュアシリーズ」などがあります.これらの物語はキャラクタや舞台設定は異なりますが,ストーリーとして共通している部分があります.

 ストーリーの共通している部分を表現するものとして,上述したジャンルやキーワードがあると思いますが,それらはざっくりとした(ざっくりしすぎている)共通点の説明になっています.例えば,同じアクション・バトルジャンルの漫画であり,「ヒーロー」を題材とした漫画でも,「僕のヒーローアカデミア」は「主人公は最初弱く,困難を乗り越えて強く成長していく物語」ですが,「ワンパンマン」は,「主人公が強すぎて立ちはだかる敵を次々と倒していく物語」となっています.「僕のヒーローアカデミア」が好きな人の中には,強くなっていく過程を楽しみたいという人もいますし,「ワンパンマン」が好きな人の中には,敵をあっさり倒す痛快さが好きという人もいます.そういった人たちに同じジャンル,同じキーワードだからといってこれらの物語を推薦することは果たして正解でしょうか?

 そこで,私はコンセプト文が類似する物語同士を結びつける新たな架け橋になるのではないかと考えています.

 しかし,コンセプト文はよく見るような文章ではありません.そこで,今回の私の研究では,類似する複数の漫画のあらすじ文から共通する要素を抽出し,コンセプト文を作成することができるかについて検証をしました.また,そのコンセプト文が作成元となった漫画の説明として妥当かどうかについて検証しました.

 今回は漫画全巻ドットコムの歴代発行部数ランキングで掲載されているあらすじ文を使用し,コンセプト文を以下の手順で作成しました.
  1. あらすじ文の文章を単語レベルに分解し,名詞,形容詞,動詞のみの文章にする.
  2. 個々の漫画のあらすじ文をベクトルに変換する.
  3. ベクトルからあらすじ文の特徴が似ている漫画をグループ(クラスター)に分ける.
  4. それぞれのクラスターを代表する単語を機械的に選定する.
  5. 選定した単語とコンセプト文を作る条件を指示し,ChatGPTにコンセプト文を作成させる.
 
 このような手法を用いて作成されたコンセプト文を一例ですが,紹介します.

似ている漫画として同じクラスターに分けられた漫画一覧:
H2, うる星やつら, ふたりエッチ, みゆき, かぐや様は告らせたい 〜天才たちの恋愛頭脳戦〜, きまぐれオレンジ・ロード, ToLOVEる-とらぶる-, ラフ, ニセコイ, 僕等がいた, ヲタクに恋は難しい, その着せ替え人形は恋をする, ママレード・ボーイ, 快感フレーズ, 天使なんかじゃない, 咲 -Saki-, あなたがしてくれなくても

このクラスターを代表する単語として選定された単語:
ラブコメディ二人

選定された単語を用いて実際に作成されたコンセプト文:
二人の関係が揺れ動きながら繰り広げられるラブコメディの物語

クラスターに含まれている漫画とコンセプト文を見比べてもらえればわかるかと思いますが,クラスター内の多くの漫画に当てはまるそれっぽいコンセプト文になっていることが確認できます.
実際に,クラウドソーシングを用いてコンセプト文が漫画を説明できているか確認をとったところ,多くの漫画で「当てはまる」,「部分的に当てはまる」との回答が6割以上得られました.このことから,コンセプト文を作る元となった漫画をコンセプト文は大まかに説明できていることが示唆されました.

 今後は,コンセプト文を作る手法について再度検討を行い,より多様なコンセプト文の作成に向けて研究を進めていきたいと考えています.

 ここまで読んでいただきありがとうございました!より詳しい内容を知りたい方は,ぜひ下記にある発表スライドや論文も読んでみてください!!!


発表スライド:  
TaketoFujikawa_EC2025@NihonUniversity.pdf from Matsushita Laboratory

論文情報

藤川 雄翔, 松下 光範, 山西 良典. あらすじ文に含まれる物語内容の共通要素に着目したコンセプト文の生成, エンタテインメントコンピューティングシンポジウム2025論文集, pp.10-19, 2025.

感想

 コミック工学に引き続いて2ヶ月連続しての学会発表になりました!なかなかにハードなスケジュールにはなりましたが,なんとか無事に走り切ることができてよかったです.
 EC研究会に発表者として参加するのも3度目になりますが,今回は初めて私自身が主体となって進めた研究を発表することができました.また,今回発表した研究が査読を通過し特選セッションの一つとして選ばれたことは,大学院の修士課程で成し遂げたことが認めていただけた証となり大変嬉しかったです!査読をしてもらったことで見えてきた課題もありますが,今回のこの発表を糧として,今後はこの研究をさらに練磨し論文誌の投稿に挑戦したいと思います!!
 最後になりますが,論文や発表スライド等に関してご指導いただいた松下先生,山西先生に感謝申し上げます.ありがとうございました.


(文責:藤川)
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