十二期生 / 研究活動 / 高橋知奈

Posted on 2023-09-19
KES2023で発表しました(M2高橋)


皆さんこんにちは!
松下研究室M2の高橋知奈です.
2023年9月6日(火)〜8日(金)にギリシャのアテネにありますロイヤルオリンピックホテルで開催されました27th International Conference on Knowledge-Based and Intelligent Information & Engineering Systems (KES2023)で発表しました.

発表内容

Title: Exploration cycle finding a better dining experience: a framework of meal-plates
Author: ○China Takahashi, Mitsunori Matsushita, Ryosuke Yamanishi

皆さんは,日々の食事の時間が好きですか?
私は,昼ごはんを食べたあとすぐに夜ご飯に何を食べようか考えてしまうくらい1日の中で食事の時間を楽しみに毎日生活しています.
私と同じように,食事を栄養摂取のためだけでなく,日々の暮らしを彩る体験コンテンツの1つとして捉えてる方は多いのではないでしょうか.例えば,旅先でその地ならではの料理を食べたり,季節の野菜を食べて四季を感じたり,懇親会や忘年会などの場で食事しながら会話をすることで親睦を深めたりなどがそれに当たります.

私は,この食事体験を通じて生活の質が向上するということを「Quality of Dining」と名付け,QoD向上に向けて研究を行っています.
このQoDを向上させるためには,料理の味ももちろん重要ですが,それと一緒に,その料理をどのように演出しているのかも重要です.
例えば演出要素としては,食材の奇抜さや,調理方法,盛り付け,器などがあります.

私はこのうち「器」に着目して研究を行っています.

しかし実際器なんてなんでもいいよ,という方も中にはいらっしゃるかもしれません.
ですが,器は単に「料理を盛り付ける入れ物」ではなく,料理を引き立たせる重要な役割も持っています. 
もし,料理を盛り付けるという役割のみを器に求めるのであれば,なんでも入る深くて大きな器が1つあれば十分です.しかし,この世界にはたくさんの種類の器が存在しており,我々はそれを料理やシチュエーションによって合わせて使い分けています.
下記は私が考える,美味しそうだな〜映えてるな〜おしゃれだな〜と思う食事の写真です.

この写真たちのような器はどのように選んだらいいのでしょうか?

器の選択は,実際にやってみると想像しているよりも意外に難しいことがわかります.
その理由は主に2つあると考えています.
1つ目は,料理に合わせた選択が必要な点です.
器は料理の食材や作り方によって選択するものが異なるため,それらに合わせた器を選択する必要があります.
2つ目は,選択者の嗜好やインスピレーションに合わせた選択が必要な点です.
唯一の正解の料理/器がなく,一つの器/料理に対して,複数の料理/器が選択肢となり得ます.
例えば,下の図のようにパスタは丸くて平らな皿だけに盛り付けられるのではなく,深い皿や,四角い皿も選択肢となります.
そのため,料理にあっている器の中でもさらに自分の好みに合わせた器を選択する必要があります.

本研究では,この2つの困難点を,「料理ー器間探索サイクル」によってサポートします.


このサイクルは従来の器選択方法に基づいて作成しました.
サイクルは,ExpandフェーズとFocusedフェーズの2つで構成されています.これら2つについて詳しく説明します.

  • Expandフェーズ
    これは,その器/料理がどのような料理に使うことができるのかを考えるフェーズです.
    現状では,自身の食事経験をもとにこういう器にはこう料理が合うだろうなと考えて選択するため,新たな発見や知識を得ることができず結局いつもと同じようなものを選んでしまうということが起こります.
    これに対して我々は,コンピュータが1つの器/料理に対して複数の料理/器の選択肢を提案することで,選択者に新たな発見と知識を提供します.

  • Focusedフェーズ
    これは,料理にあっている器の中から自分の好みに合った器を選択するフェーズです.
    現状では,ユーザの中で自分はこんな感じの器が欲しい!と具体的に決まっているとは限りません.
    これに対して我々は,絞り込み検索を用いてユーザに合わせて,複数の器/料理から単一の器/料理の選択をサポートします.
このサイクルのポイントは,器は器,料理は料理で自身に適したものを選択するのではなく,料理にあっている器の中から自分の好みに合った器を選択できる部分です.

本研究のゴールとしては,料理と皿の相性を理解しながら,自分の好みを整理し,選択者自身が探索的に器を選べるようになることを目指しています.

次に,これらの2つのフェーズで使用される要素技術について説明します.
まずExpandフェーズから説明します.
この実現には,器/料理に適した料理/器を明らかにする必要があります.
そのために行うべきことは,以下の2つです.

  • A. 料理情報と器情報を各々機械可読なデータに変換
  • B. Aで変換したデータ同士の対応付け

Aについて料理情報と器情報それぞれ説明します.

まず,料理情報のデータソースとしては,レシピサイトのレシピを用いました.
このレシピに含まれる情報のうち,器の要素(サイズ,形状,材質など)の決定に影響を与える要素として食材と調理動作の2つを定義しました.
この2つの選定理由は,食材の分量は器のサイズに,食材の水分量は器の形状(平皿なのか深皿なのか)に,調理動作の中で火を使っているかどうかは器の材質に影響を与えると考えたからです.
この2つのデータをバイナリベクトルに変換しました.



次に,器情報のデータソースとしては,ECサイトの器販売ページの商品説明を用いました.
器の要素としては,サイズ,形状,材質の3つを定義しました.
サイズは商品説明文に記載されている長辺,短辺,高さの実測値を用いて,形状は丸,角,花などに分類し,材質は陶器,磁器,ガラスなどに分類しました.
表で表すと以下のようになっています.

Bについて説明します.
Aで機械可読なデータに変換した器情報と料理情報の結び付けを行います.
料理情報と器情報が含まれるデータソースもとであるレシピサイトとECサイトに含まれるデータの共通項は「料理名」です.この料理名を使って対応付けを行いました.
料理名とは具体的に,レシピサイトでは料理カテゴリ名,レシピ名がそれにあたります.
ECサイトでは以下の画像のように,商品説明文に記載されているその器に盛り付けると良いとお薦めされている料理名の例がそれにあたります.



料理名を共通項とし,料理情報と器情報を結びつけることにより,レシピサイトの食材・調理動作の情報と,ECサイトの器のサイズ・形状・材質の情報が対応づけます.
これにより,以下のようなことが可能になります.
例えば,MealAとMealBの食材や作り方が似ていれば,カテゴリーがカレーでなくても,MealBをPlateAに盛り付けることも可能です.

逆も同様に,PlateAとPlateBのサイズ,形状,材質が類似していれば,商品説明にカレーの記載がなくてもPlateAにMealBを盛り付けることが可能です.

これにより,単一の器/料理から複数の料理/器を提案することが可能になります.

次にFocusedフェーズについて説明します.
複数の料理から1つの料理に絞り込む際には,従来のレシピ推薦技術を用いることができると考えています.例えば,料理の類似度,食材,喫食者の好みです.
複数の器から1つの器に絞り込む際には,器の外観特徴を利用した絞り込みが可能になると考えています.例えば,器の色,柄,形状,大きさなどです.

これらの技術を用いることでサイクルが実現します.

このサイクルに沿って器の選択を行うことで,器と料理の相性をユーザが学びながら,自身の嗜好を整理し器の選択を行えるようになると考えています.

今後の展望としては,このサイクルに基づき探索システムを構築し,ユーザ観察を行います.

発表資料

Exploration cycle finding a better dining experience: a framework of meal-plates from Matsushita Laboratory




感想

私にとって今回のギリシャが初めての海外でした.
これまでずっと日本で生きてきて,親族も周りの親しい友人も海外に行ったことがない私にとって,ギリシャは未知の世界でした.
日本では感じることができない無知は物理的に死ぬということを強く感じさせられました.

ギリシャ料理の中で印象に残っているのは写真にも載っているザジキという名前のディップソースです.これは,きゅうり・ヨーグルト・にんにくで作られています.さっぱりとしていてでもヨーグルトのもったり感もあり,肉料理,魚料理,サラダ,ポテト,パンなど何につけても合うものでした.

今回の旅は,

  • 乗り継ぎ時間長すぎてアテネ到着前に疲労
  • パルテノン神殿を見るため山?に登ると頂上で大嵐到来,命の危機
  • ラーメンを食べている途中に緊急速報の通知
  • 飛行機遅延,香港国際空港爆走

など

様々なことが起こりすぎでしたが,とても楽しい7日間を過ごすことができました!

私にこのような素晴らしい機会を与えてくださった,担当教員の松下光範先生,そして共著者として支援してくださりました山西良典先生に感謝いたします.

今後も引き続き,器の研究の領域をより広げられるよう,研究に精進いたします.


 

Posted in 十二期生, 研究活動, 高橋知奈 | Comments Closed

Related Posts