岩脇朱梨

Posted on 2025-01-21
第211回 ヒューマンコンピュータインタラクション研究会で「理学療法初学者の患者情報収集支援を目的とした患者情報収集支援ツールの提案」と言うタイトルで発表しました(B4岩脇)


皆さんこんにちは. 松下研究室B4の岩脇朱梨です. 今回は,2025年1月14日(火)〜15日(水)に沖縄県那覇市の沖縄産業支援センターで開催されました「第211回 ヒューマンコンピュータインタラクション研究会」で発表しました.


発表内容

タイトル:理学療法初学者の患者情報収集支援を目的とした患者情報収集支援ツールの提案

著者:○岩脇朱梨,松下光範,堀寛史 

皆さんは理学療法士という職業を知っていますか? 理学療法士とは,運動療法や物理療法などを通じて,患者の身体機能の回復をサポートするリハビリテーション分野の専門職のことをいいます. 高齢社会が進む日本において,理学療法士は欠かせない存在となっています.

  理学療法士が患者の問題点を抽出し,適切な治療プログラムを立案するためには,アセスメントに必要な情報を効率的に収集する能力が必要とされています. しかし,理学療法初学者は情報収集に多くの時間を要し,アセスメントに必要な情報を十分 に集められない傾向にあることが報告されています. そのため,患者の状態を十分に把握できていないまま問題点の抽出や治療プログラムの立案を行ってしまう恐れがあります(実際に,理学療法分野の症例報告において患者情報の記載が不十分な事例が散見されることが報告されています). そこで本研究では,理学療法初学者の効率的かつ見落としの少ない情報収集を可能にするため,理学療法初学者の情報収集を支援する患者情報収集支援ツールを提案しました.   実装したツールがこちらになります. 本ツールは,評価項目と,その項目の評価値の入力欄から構成されています. 記録したい評価項目のスライドボタンをオンにすることで,該当項目の入力欄が下に表示される仕組みとなります.



臨床現場の情報収集では,各理学療法士がノートなどのアナログ媒体や Excel などの汎用ソフトウェアを使用して個別に行っているため,記録手段や記録形式が人によって異なります. 例えば,“住環境” という評価項目であれば,階数やエレベーターの有無,バリアフリーの詳細などの評価値が存在しますが,従来手法では記録する評価値やデザイン,配置が人によって異なります. 記録手段や記録形式が属人化することで,患者情報の共有や,熟達者から初学者への情報収集力の継承が困難になります. 本ツールでは,記録手段や記録形式が統一されるため,記録における属人性の軽減が期待できます.


症状毎の各評価項目は,基本情報,医学的情報,社会的情報,理学療法評価の4つの観点に分類されています. この分類は理学療法士養成校にて学ぶ内容に準拠しており,この分類を正しく理解することで,患者が抱える問題の本質や背景を捉え,観点毎の情報の関連性を見極めた適切な治療方針を導き出すことができます. しかし,理学療法初学者は基礎的な知識や軽減が不足していることに加え,評価項目数が多いことから,各項目がどの観点に分類されるのかを理解し,的確に判断することが難しい現状にあります. そこで本ツールでは,予め評価項目を4つの観点に分類し,観点を切り替えながら評価項目を選択できるようにしました. 例えば,“医学的情報” という観点を選択すると,関連する評価項目が一覧として表示されます. そうすることで,理学療法初学者の知識や経験不足を補い,情報収集や治療プログラムの立案に貢献することが期待できます.


理学療法士の 1 日の平均単位数は概ね18〜20単位であり,限られた時間内で多くの患者情報の記録を行う必要があるため,特に理学療法初学者にとっては大きな負担になります. そのため,効率的で手間のかからない記録を実現させることが肝要です. そこで本ツールでは,スライドボタンやプルダウンメニューを用意し,ワンクリック操作での記録を可能にしました. さらに,BMI や体重区分など,他の評価値によって値が定まる評価値は,関連する評価値を入力することで,ツール側で計算されて表示されるようにしました.



また,理学療法士は評価時の状況や評価値から得た気付きなど,評価値以外の内容を記録することがあります. 異なる媒体に記録することの属人性や管理のしにくさなどを軽減させるため,評価値以外の内容に関しても本ツールで記録できるようにしました. さらに理学療法初学者は,記録した評価値の意味を適切に捉えられていない可能性があります. 実際に,評価値の意味を調べるために参考書を持ち歩く理学療法初学者が散見されるそうです. こうした現状を踏まえ,参考書を持ち歩かなくとも評価値の意味を確認できる機能を追加しました.


これらの機能を組み合わせた支援ツールを提供することで,理学療法初学者の効率的かつ見落としの少ない情報収集を可能にし,適切な治療プログラムの立案に貢献することが期待できます.

感想

学会では,発表者の研究発表や聴者からの質疑応答で多様な視点の考えに触れることができ,学びが多かったなと感じています. 私自身の研究に関しても,貴重なご意見を沢山いただきました. 今回の学会で得た学びを今後に活かしていけたらと思います.


国際通りやアメリカンビレッジ,首里城,沖縄ワールドなど沢山周りましたが,まだまだ周り足りないと思うほど充実した4日間でした. みんなと過ごす時間が楽しく,オンオフのスイッチを切り替えて大学生らしい遊びが沢山できたなと思います.


また,発表後に松下先生や先輩方にお褒めの言葉をいただけたこと,心の底から嬉しかったです. 松下先生をはじめ,共に参加した松下研究室と山西研究室の皆さまに心より感謝を申し上げます.




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