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Posted on 2020-11-19
NICOGRAPH2020実施報告〜コロナ下でのハイブリッドシンポジウムの記録


1. はじめに

この記録は 2020/11/1-3 に関西大学千里山キャンパスで開催された芸術科学会NICOGRAPH2020 の実施報告です.NICOGRAPH2020は,COVID-19の影響により,ハイブリッドでの開催となりました.完全オンライン開催とするか,ハイブリッド開催とするか,状況を見極めつつ悩みましたが,COVID-19の状況を考慮し,9月上旬の時点で現地発表+ハイブリッド聴講という形式に決定しました.その後,「所属組織が学生の出張を認めていないのでオンライン発表を可能にしてほしい」といった発表者からの要望があり,10月上旬に,発表・聴講ともハイブリッドでの実施とするような方針転換を行いました.

2. 基本方針

NICOGRAPH2020 は招待講演,登壇発表,ポスター・インタラクティブ発表から構成されます.招待講演は現地開催+遠隔配信,それ以外はハイブリッドとすることにしました.招待講演と登壇発表の配信は ,例年の参加者数の情報から多くても120人程度と予想されること,関西大学では普段のオンライン授業でZoom が活用されており実績があること,などを鑑みて,Zoom meeting で行うこととしました.一番頭を悩ませたのが,ポスター・インタラクティブ発表です.Zoom を発表者数分集めることが難しかったことや,Zoom Breakout Room だと各聴講者が自由に部屋を移れないこと,などの理由から,Zoomではない方法を考えました.Remo や spatial chat,NeChat などのツールも検討候補に上がりましたが,現地と遠隔会場をつなぐことを考えた場合いずれのツールも十分ではなく,当初は「ポスター・インタラクティブ発表はすべて現地で」と考えましたが,最終的には東京工科大学の戀津先生が作られたポスターセッションシステムを利用させていただくことにしました.このシステムはCEDECペラコンでの利用実績も有るということで,オンライン,対面に関わらずすべてのポスターをこちらに用意し,遠隔参加者にも閲覧してもらえるようにしました.このシステムでは,質問をテキストかGoogle Meetで行えるようになっています.

3. 参加者について

3.1 参加費

例年,2日めに懇親会を開催するのですが,今年度は懇親会や茶菓提供はとりやめ,その分参加費を減らすことにしました.例えば, 昨年度の一般会員の参加費は20,000円でしたが,今年度は10,000円という設定になりました(関西大学の学会開催補助金もあり,大幅減額を行う事ができました).

3.2 参加者数

参加費は事前申込制(10日前締切,振り込みは5日前締切)で行いました.極端な会場参加者数の増加を防ぐため,当日参加はアナウンスしませんでした.最終的な参加者は以下の通りとなりました.

参加者:114名 (現地73名,遠隔41名)
(内訳)
一般会員 現地 20名(うち当日参加  4名) 遠隔 14名
一般非会員 現地 4名(うち当日参加  1名) 遠隔   5名
学生会員 現地 10名(うち当日参加  0名) 遠隔   2名
学生非会員 現地 28名(うち当日参加  3名) 遠隔    20名
招待講演他 現地   7名
委員 現地 4名

3.3 予稿集

会場でのWIFI混雑を避けるため,予稿集は各自で事前にダウンロードしてもらうようにしました.そのため,会議開催2日前に,メールで参加者にダウンロードサイトのURLを配信しました.現地参加の方や事前ダウンロードできなかった方のために,当初は予稿集配布用の共用USBを用意する予定でしたが,ウィルス防止の観点から取りやめ,HP のプログラムのページから,個別の原稿ファイルをパスワード付きでダウンロードできるようにしました.

4. 会場について

収容人数が500名程度の会場を予約し,会場参加者の上限をアルバイト・実行委員を含めて100名として設計しました.万が一,その人数を超える場合は入場制限をすることを考えていましたが,結果的には想定範囲内で収まりました. 会場は,施設の予約状況の関係で,初日のみ500名収容の階段教室(社会学部ホール)を利用し,二日目以降は同じく500名収容の大ホール(100周年記念会館)になりました.例年の開催と同様,登壇発表は2パラとし,大ホールを仕切りで2つに区切って行うこととしました.一方,ポスター・インタラクティブ発表は,大ホールの外の吹き抜け空間を用いることにしました.これは,ポスター・インタラクティブ発表が行われている間に,大ホールを2つに仕切り,机を配置換えするためです.机の配置は,通常の半分とし,椅子も従前は1机あたり3脚であるところを2脚に減らし,聴講者間の距離を担保できるようにしました.

4.1 ハイブリッド開催のための事前準備

会場でネットワークがどの程度使えるかについて,検討する必要がありました.関西大学の eduroam は,まず VPN で所属組織のネットワークにログインしてからでないと HTTP を利用できない仕組みになっています.そのため,学内ネットワークのゲスト利用を事前に申請し,Zoom と Google Meetが利用できるかを確認しました.また,参加者が同時に接続した場合に快適に利用できるかを確認するため,回線速度を計測しました(回線速度は120M bps 程度でした).念のため,プロシーディングスは会議開催3日前に参加者にURLを告知し,ダウンロドードしてもらうこととして,当日のトラフィック低減を図りました.ただ,実際の運用では,Google Meet がしばらくすると切れる,といった,事前には明らかにならなかった問題が発生しました.今後ハイブリッドでのシンポジウム開催を企画する場合,どのようなオンラインサービスを利用するか,会場のネットワーク環境がそのサービスの提供に十分であるかについては,注意深く検討する必要があります.

4.2 機材の構成

時間帯によっては2セッションがパラレルで行われるため,機材は2セット用意しました.今回用いた機材一覧は以下の通りです.今回利用した映像機材は,関西大学総合情報学部メディアサービスステーションから貸与いただきました.
  • ビデオカメラ (PMW-AX700×1,HDR-CX485×1)
  • 三脚(ビデオカメラ用)x2 
  • ガンマイクx2
  • マイクグリップ x2
  • マイクスタンド x2
  • 給電ステーション x2
  • HDMIケーブル x2
  • キャプチャーボード(I-O DATA GV-HUVC)x2
  • Zoom 配信用Mac x2
  • Zoom 遠隔受信用 Mac x2
配信機材一覧
会場での設定
カメラはハンディカムを用意しました.登壇発表では発表スライドをプロジェクタで投影します.そこで,スクリーンに映し出されたスライドと発表者とを撮るために暗いところと明るいところの両方を映すことができるカメラを選定しました.今回はダイナミックレンジが広いハンディカム(PMW-AX700)を用いました.
今回用いた配信機器の構成
音に関しては,話者交代による接続変更の手間を避けるため,登壇発表の会場の音声を拾って配信する形式を採用しました.そのため,会場のスピーカーから流れる音を指向性の高いガンマイクで拾いました.遠隔地からの発表は,会場に備え付けた配信用のPCで立ち上げたZoomで行ってもらい,その音声を会場のスピーカから流しました.Zoomから発表した場合,会場に設置したマイクが音を入力しハウリングしてしまいます.そのため,今回は配信用機材のマイクをミュートにすることで対応しました.質疑応答の際は,会場にいる人とZoomでの発表者が交互に話すため,音響コンソールと配信機材の音の切替は人手で切り替えました(図参照).今後この切替はスイッチャーやミキサーを用いて対応するほうが良いと思います.事前に会場の構図を把握した上で,必要なケーブルの長さや機材の選定がもっとも大事な工程になると考えます. なお,理想的な構成は下記の図のようになります(倉本先生ご提案).
理想的な配信機器の構成

4.3 ポスター発表の優秀賞投票

ポスターの投票は Google Forms を用いて集計を行いました. Google Forms のURLをQRコード化したものをZoomの共有画面として公開し,遠隔からの投票を可能にしました.会場ではそれをスクリーンに表示するとともに,印刷した紙を配布しました.ただし,遠隔からの投票はあまりなく,今後改善すべき課題だと考えます.

5. アルバイトについて

今回は1日あたり15 名のアルバイト学生に協力いただきました(3日間の異なり人数は18名).業務内容は,以下の4つでした.
  • 受付業務:参加者獲得,名札・領収書手渡し,消毒・検温作業
  • 誘導:最寄り駅から会場への誘導
  • 会場内:マイク回し,マイク消毒,資料等配布
  • 配信:機器操作,配信確認,接続チェック
これに加えて,会場の構成変更(大部屋を時間帯によって区切る作業やそれに伴う机の再配置作業)やポスター会場の配置などが散発的に必要でした. 今回は会場の構成変更があることに加え,ハイブリッドのために事前想定を超える作業が発生する可能性があり,アルバイトの人数は従来のシンポジウムに比べて少し多めに用意し,人手が必要な作業に対してサポートに回れる人員が常に確保できているような体制にしました.実際,遠隔配信に関わる設定で事前想定していた以上の作業が発生しました.修士学生が中心となり,学部生に作業を指示するように自律的に行動してくれたおかげで,かなりスムーズに準備・運営することができたと思います.

6. 終わりに:積み残しの課題

今回は,オンラインプロシーディングスの公開はPDFが揃った時点で公開としましたが,特許申請などの理由により,事前公開日を予め定めておくほうが良いでしょう. 優秀な運営メンバーを集めておくことも会議の成功には欠かせません.これは,運営委員だけでなく,アルバイトにも当てはまります. ハイブリッド開催の予算策定は不確定要素が多く難しいと思います.今回は撮影・配信まわりの機材についてはほとんど手持ちの機材で対応できたことと,補助金により会場費をほぼ無料にできたことで例年に比べ大幅な減額が可能になりましたが,これは環境によって大きく異なることになります.一方,アルバイト予算に関しては,当初予定していた以上の支出になりました.このあたりのノウハウの蓄積が,無理なくハイブリッド開催を行うために必要になると思われます.

謝辞

機材選定の項の執筆にあたり,福知山公立大学の倉本到先生,ならびにM1玄道俊くんの協力を得ました. 記して感謝を表します.
(記: NICOGRAPH2020 実行委員長 松下 光範)
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